Daz Studioでリアルな絵を作ろうと思ったら、私は次の要素を大切にしています。
- フィギュアを生き生きと造形する(表情、ボディの形状、髪の形、服装等)
- どんなポーズをとるか
- 背景
背景を考えて、フィギュアを配し、ポーズをとっていきます。
日本女性を表現したいので、背景に日本を切り取ったHDRIを選択しています。そうすることによってリアルで身近な絵ができると思うんですね。
HDRIって何ですか?
- デジカメのオートブランケットという機能を使って、明るさの異なる画像を撮影し、最も暗い写真、普通の露出の写真、最も明るい写真を合成して作り出した、現実世界に近い輝度情報を持つ画像( High Dynamic Range Image)のことです。
- Daz Studioのような3DCGを作成するソフトで使う場合、360度画像のHDRIを使います。HDRIは(よい条件で撮影したものほど)現実世界に近い輝度情報を持っているので、そこに配置したフィギュアは照明のような背景画像の影響を受けて、リアルに背景と馴染みます。たとえばHDRIに日向と日陰の両方が映っているとしたら、日向にフィギュアを置くと実際にフィギュアに陽が当たったようになりますし、日陰に置くと、全体に影がかかったように暗く表示されます。
- 360度画像のHDRIは背景を360度ぐるぐると回して、どの場所にでもフィギュアを配置できます。フィギュアを正面から捉えればフィギュアの背景の部分が表示され、フィギュアを背中から捉えれば、フィギュアの正面の景色が表示されます。2D画像と違って奥行きが感じられるので、とてもリアルな表現をすることが可能になります。
- HDRIは拡張子が.hdrと表示されたものです。この画像を開くことが出来る代表的ソフトはAdobeのPhotoshopです。もしあなたのパソコンにPhotoshopがインストールされていれば、HDRIを開いて、どんな画像なのか見てみることができます。もちろんフォトレタッチすることも可能です。
HDRIの読み込み方
ではさっそくHDRIをDaz Studioに読み込んでみましょう。
Render Settingsペインの中のEnvironment MapからHDRIファイルを選択します。HDRIは事前にネットで手に入れておきましょう。
拡張子にhdrと付いたものを選びます。
今回は東京・表参道の街角を撮影したHDRIを使ってみます。
Draw DoomをオンにするとHDRIが表示されます。ただし、ビューをNVIDA IrayかFilamentにしていないと、表示されません。
背景を適切なサイズにする
Dolly Zoom|Focal Zoomにマウスを置きます。
マウスを右クリックしたまま、矢印のように上向きにマウスを動かすと、背景の画角が広くなります。
背景を左右上下に移動する
次に360度背景の表示したい部分をビューに表示するために、左右上下に移動します。
Orbit | Rotate | Bank にマウスを置きます。
普通に左クリックしながら、上下左右にマウスを動かすと、背景のビュー内の表示部分を変えることができます。
なんとなくおさまりがよいので、この背景に人物を読み込みます。
フィギュア読み込み
さて、ここからフィギュアを配置していきます。フィギュアはとんでもないところに読み込まれることもありますので、その場合は上記「背景を上下左右に移動する」でどこにいっちゃったのか探してください。
また、とても小さく読み込まれることもありますので、その場合はこの先紹介する方法で、フィギュアを大きくしてください。
フィギュアの影
3DCG用のHDRIの場合、影が表示されるように仕込んである場合があります。
夜景のHDRIなんてのもあるのですが、もちろんその場合に影はできません。
フィギュアのサイズを変える
Sceneペインでフィギュアを選択し、Pan | Dolly の上にマウスを置き、マウスホイールを動かします。
人物が大きくなりました。
フィギュアの移動・回転
Sceneペインでフィギュアを選択し、parameterペインの中のZ移動で人物を中心に移動しました。
フィギュアを回転させるときは、Y Rotateを使います。スライドさせても数字を変えてもどちらでもOKです。
人物に照明を当てる
今回のHDRIは日当たりがあまりよくない条件下で撮影されたものなので、照明で人物を明るくします。
Scintillant Portrait Rightsという製品を使ってみました。
SceneペインでLignt Focus(照明全体)を選択し、X Rotateで360度回転させて一番太陽光に近い位置に照明を持っていきます。
レンダリングする
照明を使ったので、Render SettingsペインのEnvironment ModeでDome and Sceneを選択します。HDRIからの光の影響だけでレンダリングする場合は、Dome onlyを選択します。
最後にRenderボタンを押してレンダリングしてみましょう。
ものすごく早くレンダリングが終了し、驚くほどです。このようにレンダリング速度が速く、良い結果が得られるのがHDRIを背景に利用する大きなメリットです。
レンダリング結果です。
背景をぼかす
今度は人物をアップにしてみます。
人物をアップにすると、背景もアップになるのでHDRIの粗さが目立つようになってきました。
HDRIは4K(今回は5K)ぐらいではアップにすると画像の粗さが感じられます。10K ぐらいでないとアップで鮮明な画像は得られません。しかし10Kにもなると100メガを超える画像サイズになります。
人物をアップにするということは被写界深度の深い画像になるということなので、背景をぼかした方が自然です。なので、4K近辺のHDRIでも十分に使えます。
まずは Dolly Zoom|Focal Zoomにマウスを置き、右クリックしてマウスを下向きに動かします。
そうすると人物も背景もアップになります。
Orbit | Rotate | Bank にマウスを置いて、左クリックしながらマウスを上に持っていくと背景とフィギュアが同時に上方向に見上げるかたちの画角になりました。
背景をぼかす
では背景をぼかします。
SCENEペインでカメラを選択し(あらかじめカメラを作成しておいてください)、parametersペインでcameraを選択後、Depth of FieldをOnにしてください。
サイコロのような正方形部分をマウス左クリックしたまま動かして、図のようにピントが合う範囲の立方体が見えやすい角度に持っていきます。
図の赤く囲んだ部分、Focal Distanceで立方体部分(ピントの合う範囲)が顔を収めるようにスライダーを動かします。
青く囲んだ部分、F/Stopはピントの合う範囲~立方体の幅を広げます。立方体の幅が広がるほど、ピントの合う範囲は広くなっていきます。
レンダリング結果です。
管理人のコメント
HDRIを背景に使うメリットは、フィギュアを配した絵にリアルな世界観が出てくるところです。雰囲気を作り出すことができますね。
フィギュアの影ができるように仕込んだHDRIや、照明を当てる必要がないほど光量の多いHDRIの場合、背景とフィギュアがリアルに馴染んでいて、無造作にフィギュアを置いたような浮いた感じが全くしません。
このレンダリング画像の場合、照明を当てていますが、照明を遠ざけてリアルな感じになるように工夫しています。照明を使いましたが、背景と馴染んでいることがわかります。
もう一つのメリットはレンダリング時間がとても短いことです。このレンダリング画像の場合、わずか30秒程度でファイルを完成させました。
もしモデリングした建物や植栽を置いた場合、レンダリングに30分以上かかってしまうのではないでしょうか。
一方欠点は背景周辺部の画像が変形することです。
このレンダリング結果の場合、左側の人物が太ってしまっていることがわかります。右側のバイクも変形しています。
画角をアップにすると背景周辺部の変形はなくなりますが、今度は画像の粗さが目立つようになります。
このような場合、背景をぼかして逆にリアルな絵を作ることができます。
360度のHDRIだからこそ、1枚の画像を手に入れれば、背景をぐるりと動かし、つながりのある絵を作ることができます。フィギュアが本物の世界にいるかのようです。
最初の絵の真後ろの風景です。
HDRIには画像の接合部があります。
HDRIは複数の撮影結果をマージして作成しているので、カメラにぶれが生じるとつなぎめがきちんと合わなくなります。このレンダリング画像を見るとわかりますが、人物とバイクの背後のポストがある部分辺りがつなぎ目です。よくみるとゆがんだようになっていますね。
以上のようにメリットデメリットそれぞれにあるHDRIですが、360度あるゆえにうまくない部分をうまくカバーして使ってもあまりある価値があると思います。